1 逆パワハラ(逆ハラ)
- 上司が部下に対して地位が高いことを盾に理不尽な要求などを行う「パワハラ」に対して、昨今では「逆パワハラ(逆ハラ)」という問題が浮上してきています。
- 逆パワハラとは、パワハラで訴えられるのを避けて強く出られない上司につけ込み、部下から上司に対する嫌がらせをすることを指します。
2 実例
- 新入社員の教育を任されていた入社5年目のAさんは、ミスを軽く指摘しただけで新入社員に「それパワハラですよ」と言われてしまい、それ以降は指示や注意をすることが出来なくなってしまった。
- 上司であるBさんが部下に新しい提案をしたところ、「忙しいんですけどすぐにやらないといけないですか?」「これまでの方法で問題ないんじゃないですか?」と取り合ってもらえない始末。また、割り込みの仕事を頼むと「私の仕事じゃないので他の人に頼んでください」と拒否される。
- 仕事をキチンとしない部下に対して注意をした上司のCさん。すると、注意をされた部下は個人のSNSにCさんの写真や氏名を晒して誹謗中傷を書き込んだ。 ④PCスキルが低い上司のDさんは、高スキルで処理速度の早い部下に仕事を頼んだところ、「そんな事も出来ないんですか?よくそんなんで部長になれましたね」と、部下に無能扱いされた。
3 会社としての対応
- 部下に馬鹿にされたことは周囲に話しにくく、逆パワハラの実体を知ることは困難です。しかし、適切な指導ができなくなれば、会社としてはたちいきません。
- かつては、「〇〇はパワハラだからやってはいけない。」という形式のやってはいけない研修等が主流でした。
しかし、禁止だけでは意味がない。会社としては、上司向けの研修として、どうやれば効果的な指導が可能となるのか、教育訓練しなければならない、ということに気付き始めています。
- どうやれば、適切な指導教育ができるのかについては後日、ご案内したいと思います。
1 マイカー通勤時の事故とリスクについて
- 会社の立地や働き方によっては、マイカー通勤を認めている企業も珍しくはないでしょう。
- 今回はマイカー通勤時の事故と、会社へのリスクについて触れていきます。
2 使用者責任
- マイカー通勤中に従業員が交通事故を起こした場合は、会社に使用者責任が発生するケースがあります。これは、バイク通勤でも同じです。
- 会社としては、マイカー通勤を認める場合には許可制にして、その把握をしなければなりません。1年に1度は、マイカー通勤の利用をチェックしなければなりません。
3 任意保険
- 社員が、自分の自働車や、バイクについて任意保険に加入していた場合には、保険会社か交渉や、賠償を行うことがほとんどです。
- したがって、任意保険に加入していれば、免責事項に該当しない限り、会社の責任が問題になることはあまりありません。
- 逆にいえば、会社は、無免許運転となっていなか(免責事項)、任意保険に加入しているかをチェックする必要があります。
- 定期的に運転免許証のコピーや、任意保険の保険証書の提出を求めましょう。
4 自転車の事故、歩行者同士の事故
- 社員が仕事時間中に、自転車もしくは歩行者にぶつかって、被害者が高齢者であるために、大けがに発展し、会社に使用者責任を求める事例も出てきています。
- これらは、事業用保険でカバーできます。あまり発生しないケースでもあり、保険料もそこまで高額ではありません。利用を検討してもよいでしょう。
5 通勤手当
- マイカー通勤をしている場合に、通勤手当を一律1万円としていることや、公共機関を利用した場合の金額を支給する会社もあります。
- えば、基本給30万円、マイカー通勤手当1万円を支払っている場合、通勤手当が距離に関係なく支払われている賃金である(つまり、実質は、基本給と同じである)として、基本給を31万円と計算した上で、例えば、月額31万円÷160時/月(月平均所定労働時間)で、残業代の時間単価を計算すべきか、という問題もあります。
- 対策としては、3キロ以内は5000円、5キロ以上は1万円と距離に応じて規定する方法もあるほか、あくまで、通勤に要する費用であるとして、基本給を30万円と計算した上で計算する方法もあります。(是正を指摘されるとしても、総額の3%程度の違いであり、残業代の支払額に大きな影響が出ないからです。)
6 結論
- コロナ禍ということもあって以前よりマイカー利用が感染症対策になっているのも事実です。
- しっかり制度化しておかないと後々面倒になりかねません。十分検討して導入することが大切です。
1 序章
- その①(バカッター、バイトテロ編)でお伝えしたような、在職中の従業員が問題を起こした際に会社が被る損害についてお話します。
2 就活セクハラ
- この手のニュースはここ数年、頻繁に見掛けるようになりました。
これは大手企業や有名企業で起こっている事件で、その会社に入りたいと希望している就活生の女性の弱みにつけ込んで、性的関係を迫るという卑劣な行為です。
3 過去事例
- 大手ゼネコン、大林組の社員が就活中の女子大学生とOBOGをつなぐスマートフォンアプリで知り合い、パソコンを見ながら面接指導をすると言って学生を自宅マンションに誘い、わいせつな行為をしたとされる。
- 日本が誇る大手商社、住友商事の社員が就職活動のためにOB訪問に来た女子大生を泥酔させ、この女子大生が予約していたホテルの部屋に侵入。性的暴行に及んだというもの。
- 上記の他にも、挙げればキリが無いほど就活生の女性を狙った性犯罪はあります。
4 顛末
- 上記2社の事例では、何れも被害を受けた女性は警察に駆け込んでおり、犯行が明るみに出たことで社員は逮捕されている。
- この事件は端的に言えば、人気の大手企業で働こうとすると、レイプされることがある。後輩や自身の就活が不利になる可能性を考えると、泣き寝入りせざるを得ないという、何とも卑劣極まりないものです。
- 当然のことながら、当該社員は懲戒解雇されています。
5 損害
- 前述した通り、罪を犯した社員は解雇処分となり会社を去りますが、その後も会社は謝罪に次ぐ謝罪、メディアへの対応や事態の収拾に追われます。
- さらに、会社の名前は大きく傷つき、「あの会社に入ろうとするとレイプされる」など不名誉なレッテルを貼られてしまい、就職を希望する学生は大幅に減ることでしょう。
- このように、一時だけのものでは無く、しばらくは会社の社会的信用は失われたままになり大損害を被ります。
6 まとめ
- 上記のような事態を完全に防止することは出来ないと思います。
- しかし、前職での仕事振りや人柄、素行等について調査を行う弊社のバックグラウンドチェックを導入することで、面接や書類選考だけで判断するよりかは、そのような危険分子となり得る社員の入社を未然に防ぐことは可能です。
1 就業規則の休職期間は、どうやって計算するのか
- 前回の鬱病申請でも触れた休職期間について今回は述べていきます。
2 休職期間
- 休職期間は、解雇の猶予期間です。休職期間を過ぎても、復職できない場合には退職となります。
- 休職期間内に、復職できれば退職となりませんが、復職できなければ退職なります。したがって、休職期間の計算は重要です。
- しかし、就業規則の規定は難解です。次章からその計算方法について触れていきます。
3 休職期間の計算
- 休職期間のスタートは、欠勤が30日となったときとなっています。
- 10日間の有給の申請があった場合には、10日間は有給消化であって欠勤ではありません。そこで、出勤しなくなって40日(有給消化10日+欠勤30日)を超えてから、休職期間となります。
- その後、6か月間が休職期間となります。
- つまり、出勤しなくなってから、有給消化10日+欠勤30日+休職期間6か月の合計7ヵ月10日を過ぎると休職期間の満了となります。
4 最後に
- 休職期間は、解雇の猶予期間ですので、会社が延ばすことは認められます。
- したがって、休職期間満了の1ヵ月以上前に、「就業規則上の休職期間は〇月〇日です。締め日の関係もあり、Aさんの休職期間の満了日は、〇月〇日とします。」と文書で通知して、休職期間について争いがない状態にしておくことが大切です。
1 「鬱病を理由に休職したい」
- 従業員がこう申し出てきました。会社としての対応はどうすればいいでしょうか?
2 診断書の提出
- まずは、従業員に診断書の提出を求めます。また、会社と家族が一緒になって、従業員を支えるためにも、家族と一緒に面談を求めてもよいかもしれません。
- 出勤しないことに正当理由があることの確認が必要です。また、仕事の段取りを考えるうえで、復職の予定を知りたいところです。
- 仮に、病気の診断書が出てこない場合(正当理由がない場合)には無断欠勤として判断せざるをえません。ただし、早急に判断せずに2,3ヵ月は催促し続けることになります。
- 病気の程度も争点の一つとなります。就労不能なのか、時短や、業務の軽減が相応しいのか、確認します。
- うつ病等は自殺の懸念もあります。注意点等について、お医者さんの説明等も知りたいところです。
3 給与について
- ノーワーク、ノーペイが原則です。休職されている以上は、賃金の支払い義務は原則として発生しません。
- 「就業規則で賃金の支払いを約束している」場合はこれを支払う必要があります。
- つ病の発生が会社の責任(労災)に当たる場合には、賃金相当額を賠償として支払う必要があります。なお、現実論として、会社の人事担当者としては、「会社の責任を認める。」形で対応することは難しいです。
4 事実確認
- 初動の段階で、社員から「うつ病にかかった原因について心当たりがあるか。」を聞いておくことが必要です。
- 例えば、半年後、就労不能(休職期間満了)を理由に、社員を解雇する可能性があります。その段階では敵対関係になっており、詳しく事実を聞けなくなることがあります。初動の段階で社員と間で、①病気になった原因、②復職の時期(見通し)、③復職について、職場としてどのような配慮が必要か、を話し合っておくことは大事です。
5 傷病手当
- 理論上、病気の原因が仕事にある場合(労災)には、労災申請をします。プライベートな原因で病気になったのであれば、傷病手当(健康保険)を検討します。
- 現実論として、会社の人事担当者としては、当初から「会社の責任を認める。」ことは難しいです。通常は、会社で健康保険に加入させている場合には、傷病手当の手続をすることになります。
- 傷病手当については、国から社員に対し休業補償として賃金の60%程度が支払われるイメージです。
6 社会保険の労働者負担の回収
- 休職期間中は、会社が社員に支払う賃金は0円となります。もちろん、就業規則で賃金の支払いが義務付けられている場合は別になります。
- もともと、会社は、社員の給与から社会保険(厚生年金と健康保険)を控除して、同額を国に納めています(実際には会社負担分を合わせて倍額を国に支払っています。)。
給与が0円になると、会社は社員の給与から控除できなくなるので、同額を社員から個別に徴収する必要がでてきます。
- したがって、会社は社員に対し、毎月、同額を請求する必要が出てきます。
7 休職期間
- 病気の原因が仕事にある場合(労災)を除くと、一定期間の休職期間内に、復職する目途が立たなければ、社員は退職となります。
- 就業規則で休職期間が定まっていればその期間、定まっていなければ相当期間となります。もちろん、「就業規則で定められた休職期間が短すぎる。」と訴訟になることはよくあります。相当期間がどれくらいは判例を調べて検討します。
8 復職
- 休職期間中に、復職の目途が立てば、医師とも相談しながら、業務量を調整して、少しずつ仕事復帰してもらいます。
- なお、仕事量を減らしたのであれば賃金を下げることも許されます。
- 復職が難しい場合には退職となりますが、社員は、「復職は可能である。」と主張し、会社は「復職は難しい。」と判断して訴訟になることはよくあります。
- 折衷案として、退職金を上澄みして、双方が話し合いで解決をすることもあります。
9 定期連絡
- 休職期間中について、1ヶ月に1度と、会社の担当者が社員と定期的に連絡をとりあって、①復職の時期(見通し)、②復職について、職場としてどのような配慮が必要か を話し合っておくことが必要になります。
- 大まかな流れは以上となります。