採用調査事例(悪い人)

1 10年間勤務していたはずが

  1. 面接での受け答えはまずまず、だが時々専門用語を聞いたときの反応が気になる。
    10年も経験がある割にはイマイチということでご依頼

2 調査の結果

  1. 新卒入社で10年在籍していたという会社は丸々嘘。
  2. 新卒ではあるもののわずか10日間しか勤めず、挙げ句無断欠勤のまま蒸発した とのことでした。
  3. 更には必然的に出来る空白期間で前科があることが判明
  4. 懲役5年ということでした。

3 調査その後

  1. 依頼主様は上記の結果に驚きを隠せませんでした。
  2. すぐさま不合格通知を出し、事なきを得ました。

4 まとめ

  1. 仮にこの人を採用してしまっていたら、きっと何か問題を起こしていた事でしょう。
  2. 再犯の可能性が高いです。

マイナス評価が出やすい履歴書?

1 履歴書の傾向

  1. 最近は手書きが減り、パソコン打ちの履歴書が増えています。
  2. 手書きなら字が汚いのは言うまでもありませんが、
    採用調査(履歴書調査)によって悪い評価が出る人には傾向があります。

2 手書きの場合

  1. 誤字脱字が散見される。
    →字の綺麗さは限界がありますが、誤字は見直せばある程度は直せるので
     それを怠っている証拠になります。
  2. (株)、(有)の前後が逆になっている。また略称のままになっている。
    →キチンと調べず曖昧な記憶のみで書いている。仕事にもそういった面が出る可能性が高く注意が必要です。

3 パソコン打ちの場合

  1. 枠内に収まっておらず、途中で文字が途切れている。
    →WordやExcelの扱いに慣れていない可能性があります。
  2. 明らかなスペルミス
    →単なる不注意もありますが、校正機能を無視している可能性が高いため
    全く見直しが出来ていないケースがあります。

4 手書き、PC共通

  1. 法人名のみの記載で屋号や店舗などの記載が無い。
    →普段正式名称を使う事もなくキチンと覚えていないだけの場合もありますが、
     普通は調べてから記載しますね。
  2. 転職回数が多い割には、空白期間が無い。
    →故意に埋めているケースが多いです。前後3ヶ月ずつ増やすだけでも半年の空白期間になりますから大きいですね。
  3. 写真が斜に構えている。スーツでなく私服撮り。
    →私服に関してはアパレル系ならアリかもしれませんが、それ以外の業種だと相応しくありません。

5 結論

  1. 応募時に初めに目にする書類、「そこから選考が始まっている」と意識している人とそうで無い人は雲泥の差があります。
  2. ですがあくまで目安なので、一見パーフェクトな履歴書でも実際の中身を調べてみるととんでもない事実が発覚するケースもあるので注意は必要です。

採用時における使用者責任について

1 採用時の使用者責任について

  1. 企業が従業員の不法行為により生じた第三者に対する損害について、会社も損害賠償請求しなければならないとする「使用者責任」というものがあります。
  2. 入社直後に起きた事件などは事前の対策が難しい現状です。
  3. ここからは欧米で実際にあった事例を紹介します。

2 欧米での事例

  1. とあるスーパーA店にて40代の男性Xを採用しました。
  2. 普段は与信情報や犯罪歴などを事前に調べてから採否を出すのですが、
    この時は繁忙期真っ最中で、軽い面接のみでさっそく翌日から出勤してもらうことになりました。
  3. Xが3日ほど働いた後、4日目に事件は起きました。

3 事件発生

  1. ある常連客のお子さん(10歳の女の子)が、買い物中の母親の目を離したスキに
    スーパーA店の敷地内にて性的いたずらを受ける事件が発生しました。
  2. その犯人こそ4日前に雇ったあの男性Xでした。
  3. 彼は勤務初日から買い物客の中からその女の子に目をつけ、母親のスキをうかがっておりました。
  4. 当人はこの後母親から訴えられましたが、それだけでは終わりませんでした。

4 スーパーA店が訴訟対象に

  1. 母親はスーパーA店も男性Xと同時に訴えたのです。
  2. 裁判では1審のみで、すぐさまスーパーA店が有罪になりました。
  3. スムーズに事が進んだのは正に「使用者責任」が原因でした。

5 使用者責任

  1. 今回のケースでは男性Xには前科があり、前回起こしたのも同様の女児への性的いたずらでした。
  2. スーパーA店が採用前に男性Xを調べていれば犯罪歴が見つかり、雇わずに済んだ。
    →今回の事件は起こらなかった。
    という見解でした。
  3. 軽い面接のみで済ませてしまい、しっかりと経歴の裏とりをしなかった事が悲劇を招いてしまったのです。

6 まとめ

  1. 今回のケースでは欧米の事例でしたが、前科があるかどうか事前に調べる有用性が現れたケースでした。
  2. 自社でネット検索などしてみるのも有効ですし、それだけで不安でしたら調査会社へ委託してみるのもいいかもしれません。

    電子契約と本人確認

    1 電子契約と本人確認

    1. 電子契約と本人確認について少し解説をしてみます。
    2. 現在の電子契約では、イメージ言えば、メールを使って契約するのと同じです。
    3. ●●@kk.com(の利用者)と、〇〇@kk.JP(の利用者)が契約を成立させたことまでは証明できますが、●●@kk.comが山田花子さんであることは証明されていません(本人確認がありません)。
    4. 本人確認がされていないということはどういうことか、どんなリスクがあるかを説明します。

    2 本人確認

     Ⅰ.本人確認とは何か

    1. 例えば口座開設を例にとります。本人確認された口座は、以下の効果を持っています。
      Aさん名義の口座があるということは、Aさんが銀行に認められていること、Aさんに送金すればAさんに支払ったことが確認されます。
    2. 書面で契約する際には、契約書に印鑑証明を付けて、実印を押してもらいます。
      実印は本人が保管しています。したがって、実印が押してあり、印鑑証明が出ていることは、Aさんが契約したことが推察されています。

     Ⅱ.本人確認の方法

    1. 本人確認とは、Aと名乗る人物がAさんであることです。
      契約書の場合には、「〇〇の住所を持つ山田花子」と名乗る人物は、〇〇に住んでいること、名前が山田花子であることです。
      契約書を締結する場合には、身分証を持って来てもらい、身分証の記載を確認します。
    2. 身分証を他人に貸したりはしません。「〇〇の住所を持つ山田花子」の身分証を持つ人物は、「〇〇に住んでいること、名前が山田花子であること」が確認されるわけです。

    3 メールと本人確認

    1. 普段、私達はAさんから来たメール(●●@kk.com)のメールをAさんから来たメールだとは疑いません。
    2. しかし、メールには、本人確認機能はありません。
    3. 通常、私達はAさんと直接会ったり電話をしたりして、その一環でメールをやりとりします。
      これらのやりとりによって、「●●@kk.com」がAさんのアドレスだと、何となく信じてデータをやりとりしているのです。
    4. しかし、「●●@kk.comは、山田花子さんである」と思っていたが、全然違う人だったということがありえるのです。

    4 セキュリティーと本人確認の違い

    1. セキュリティーがしっかりしていれば、本人確認が大丈夫だという誤解もあります。しかし、セキュリティーと本人確認は別の概念です。
    2. 例えば、パソコンを起動するのに暗証番号や携帯電話の登録、二段階認証等を設定します。携帯電話にショートメールが送られて、その番号を入力しなければ、パソコンを起動できない仕組みです。
    3. これらは、パソコンを登録した人以外の人がそのパソコンを操作できない仕組みであり、セキュリティーの問題です。
    4. 例えば、山田花子と登録してあるパソコンに指紋認証機能が付いているとしても、そのパソコンから来たメールが、本当に「山田花子」という人物から来たかは、全く分かりません。 そもそも、そのパソコンを使っている人物が「山田花子」という名前を偽証している可能性があるからです。

    5 裁判と本人確認

     Ⅰ.裁判での紛争

    1. 裁判で、「契約書には私名義の署名がある」が、私は「契約していない。」ということが争点になることは今までは稀でした。
    2. 今までは、自宅に出向いて対面し名刺交換してやりとりすることが多く、Aさん名義の家に住んでいるのですから、Aさんであることは確認が取れていました。

     Ⅱ.今後の注意点

    1. しかしながらリモートで手続するとなれば、「●●@kk.comは、山田花子さんである」と思っていたが、全然違う人だったということがありえます。
    2. 今までも会社の一部の人間が辞めてしまい、その者名義の署名があるが、「会社としては、その者が本当に署名したかどうかは分からない。」という紛争は珍しくありません。

     Ⅲ.対策

    1. 名刺管理ソフトがありますので、「●●@kk.com」等のドメインをチェックして、当該会社で使われているアドレスかどうかを確認する方法があります。
    2. メールでのやりとりもしっかり残しておくことが重要です。多数のメールのやりとりが残っていれば、他の事実関係から、そのメールの送り手を特定することが可能になります。
    3. 「●●@kk.comは、Aである。」「〇〇@kk.JPは、Bである。」等の確認書を旧来の契約書形式で残しておくのもよいと思われます。

    電子契約と意思表示

    1 電子契約と意思表示

    1. 電子契約では、契約の成立について、「●●@kk.com(の利用者)と、〇〇@kk.JP(の利用者)との間で契約が成立した。」その契約はこれですという形で、契約書がPDFで表示されます。
    2. 旧来の紙の契約書については、契約者の名前が書かれて、判子が押されます。契約当事者が、契約書に署名した事実は、その契約書どおりの契約を成立させようとする意思の存在を推察させます。
    3. これに対して、電子契約では、●●@kk.com(の利用者)が、承諾ボタンを押したことしか推察されません。
      ここで、ポイントとなるのは、●●@kk.com(の利用者)が「契約を成立させる意図で、承諾ボタンを押したこと」か推察されるシステムになっているか。裁判で容易に立証可能になっているかが問題になり得ます。

    2 契約の問題

     Ⅰ.契約の成立

    1. 契約は、契約当事者の意思の合致で成立するとされています。つまりAさんが契約書通りの契約をする意思を持ち、Bさんも契約書通りの契約する意思を持っていたということです。
    2. 「契約する意思」を最も簡単に証明する技術が契約書です。旧来の紙の契約書については、契約者の名前が書かれて、判子が押されます。契約当事者が、契約書に署名した事実は、その契約書どおりの契約を成立させようとする意思の存在を推察させます。
    3. 例えば、売店で100円を渡してジュースを買うとします。契約書は取り交わしませんが、お客さんは「ジュース下さい。」と言って100円を渡します。これによって、お客さんは「ジュースを100円で買う。」との意思を示しています。
      これに対して、店員さんは、100円を受け取ってジュースを渡します。これによって、店員は「ジュースを100円で売る。」との意思を示しています。

     Ⅱ.電子契約における意思表示

    1. 電子契約では、●●@kk.com(の利用者)が、承諾ボタンを押したことは推察されます。
    2. しかし、●●@kk.com(の利用者)が「契約を成立させる意図で、承諾ボタンを押したこと」か推察されるシステムになっているか。裁判で容易に立証可能になっているか、これは大事な問題です。
    3. なお、実際のケースでは、契約書にしたがって、お金の支払いや、商品の移動がありますので、総合的には、「当事者は、契約書どおりの契約を成立させる意思を持っていた。」と認定されることも多いとは思いますが、電子契約を使うためには大事な問題です。

    3 電子契約のポイント

     Ⅰ.「契約を成立させる意図で、承諾ボタンを押したこと」か推察されるシステム

    1. 電子契約では、「●●@kk.com(の利用者)が、承諾ボタンを押した。」ことまでは、容易に認定できます。
    2. 次に、●●@kk.com(の利用者)が、「契約を成立させる意図」以外で、承諾ボタンを押すことがない仕組みが必要です。
      例えば、「契約の承認ボタンを2度押させる。」「承認ボタンと拒否ボタンを用意して、承認ボタンを押したことを明確にさせる。」「契約書締結後に5分以内であれば、取消ボタンを用意する。」「契約後に、契約書をメールで送ったり、当事者の住所に送って、間違いがあればそのことを申告できるようにする。」等のシステムがあります。

     Ⅱ. Ⅰを容易に立証できる機能

    1. システムはバーションアップしてきますので、当時の承諾のプロセスを記録化し、これを再現できるシステムが必要です。動画でもよいですし、写真入りで操作手順を示すマニュアルでもよいでしょう(「契約書を承認したと表示されるには、こういう操作をしなければ、このように表示されないこと」を説明したものが必要です。)
    2. 仮に、「契約書を承認したと表示されているが、これは、押し間違いの可能性はなのか。」が争点になる可能性が考えれば、これらが簡単に閲覧できる機能は必要です。

    3 最後に

    1. 電子契約は非常に便利ですし、今後流行っていくと思います。
    2. しかし、どういうリスクがあるのかはきちんと理解した上で使うことをお薦めします。