- ホーム /
- 労務問題ニュース
1 不当解雇(と訴えられたケース)
- 中途採用で、経験権者として営業の担当者を雇いました。
営業に行っては取引先でトラブルを起こしている状態で、指導しても反省する様子もなく、解雇しました。
従業員が弁護士に依頼し訴訟となりました。
2 ①民事保全(仮処分)
- 従業員としては、解雇の正当性を争う場合には、②訴訟だけでなく、①民事保全(仮処分)を求めるのが通常です
- 仮の地位を求める仮処分は、訴訟手続で判決が出るまでの間の期間について、従業員として6割程度の賃金を支払ってほしいという手続となります。
- 4回程度の期日(裁判のイメージ)が開かれて、裁判所が決定を出します。
下記の②訴訟手続きと同時並行で、①民事保全(仮処分)を行います。①の仮処分だけ早めに決定がでるイメージです。
②民事保全(仮処分)では、書面だけのやりとりで、裁判所が仮の判決を書くイメージです。
- 仮の地位を認める決定であれば、訴訟にて判決ができまでの間、会社は毎月、6割程度の賃金を支払わないといけなくなります。なお、これは仮払いとなります。
3 訴訟
- 解雇の正当性を争う場合には、従業員は、判決日までの賃金の支払いと、判決後は社員であることを確認されたのだから働かせてほしい(もちろん賃金を支払ってほしい。)地位確認の訴訟が提起されます。
- 従業員は判決で勝てば、判決日までの賃金と、判決後には労働の対価として賃金の請求ができます。
- もちろん、判決日までの期間は、従業員は全く働いていませんが、それは会社が従業員を働かせなかったためであり、支払額の減額を基本的には主張できません。
4 解決金額
- 従業員を解雇した場合の和解金額はいくらぐらいになるのでしょうか。
- 訴訟上の和解になれば、和解時点からの年収の1年分ぐらいの金額が多い印象です。
退職を条件に和解金支払うことになります。
- 「労働局あっせん、労働審判及び裁判上の和解における雇用紛争事案の比較分析」というデータがありインターネットでも調べることができます。
5 会社としての動き
- もちろん会社は、社員とコミュニケーションをとって、改めるべき点は改めてもらって一緒に働いていけるのが一番です。
- しかし、「会社としては解雇相当だと判断したら、解雇してもよい。」と思います。社員との信頼関係が破綻している状態では、任せる仕事がありません。そうだとすると、解雇せず賃金として支払うのか、解雇して和解金として支払うのかという違いだけです。経済的なリスクはそこまで高くありません。
6 結論
- 訴訟まで至った時点で、なかなか元サヤに戻るのは困難です。
- 日頃からそうならないように、マネージメントするのも人事戦略のひとつと言えます。
1 採用時の使用者責任について
- 企業が従業員の不法行為により生じた第三者に対する損害について、会社も損害賠償請求しなければならないとする「使用者責任」というものがあります。
- 入社直後に起きた事件などは事前の対策が難しい現状です。
- ここからは欧米で実際にあった事例を紹介します。
2 欧米での事例
- とあるスーパーA店にて40代の男性Xを採用しました。
- 普段は与信情報や犯罪歴などを事前に調べてから採否を出すのですが、
この時は繁忙期真っ最中で、軽い面接のみでさっそく翌日から出勤してもらうことになりました。
- Xが3日ほど働いた後、4日目に事件は起きました。
3 事件発生
- ある常連客のお子さん(10歳の女の子)が、買い物中の母親の目を離したスキに
スーパーA店の敷地内にて性的いたずらを受ける事件が発生しました。
- その犯人こそ4日前に雇ったあの男性Xでした。
- 彼は勤務初日から買い物客の中からその女の子に目をつけ、母親のスキをうかがっておりました。
- 当人はこの後母親から訴えられましたが、それだけでは終わりませんでした。
4 スーパーA店が訴訟対象に
- 母親はスーパーA店も男性Xと同時に訴えたのです。
- 裁判では1審のみで、すぐさまスーパーA店が有罪になりました。
- スムーズに事が進んだのは正に「使用者責任」が原因でした。
5 使用者責任
- 今回のケースでは男性Xには前科があり、前回起こしたのも同様の女児への性的いたずらでした。
- スーパーA店が採用前に男性Xを調べていれば犯罪歴が見つかり、雇わずに済んだ。
→今回の事件は起こらなかった。
という見解でした。
- 軽い面接のみで済ませてしまい、しっかりと経歴の裏とりをしなかった事が悲劇を招いてしまったのです。
6 まとめ
- 今回のケースでは欧米の事例でしたが、前科があるかどうか事前に調べる有用性が現れたケースでした。
- 自社でネット検索などしてみるのも有効ですし、それだけで不安でしたら調査会社へ委託してみるのもいいかもしれません。
1 社内不正調査
「A社に仕事を依頼しているが、その仕事がおかしい。」という社内調査を始めることがあります。
- 仕事の品質が悪い。クレームが多い。
- 仕事を丸投げしている疑いがある。
- 仕事を依頼しているが、その値段が以上に高い。
2 原因の調査
- 例えば、予算が低すぎるためにまともな業者は請け負ってくれず、相場よりも安い金額で受けてくれる会社に依頼することになった。その会社は仕事を丸投げして、別の会社に仕事を任せていることが分かる等の事実が判明することもあります。
- 社内のB氏が、取引先からリベートをもらっており、相見積もりも取らずに仕事を発注していたことが分かる等の事実が判明することもあります。
- A社の実績が虚偽であり、実はまったく実績がなかったこと場合や、そもそもA社との取引の実体が存在せず代金を誰かが横領している場合もあります。
3 調査の目的
- 粗悪品が増えていけば、負債が増えていくことになります。事実解明もよりも、取引停止を優先して行います。
- 経験上、こういう取引先は素行不良であり、経済的に安定していません。お金がない会社から、代金を回収することは難しく、後回しにせざるをえません。
- 再発防止の観点からは、取引に関わっている人物の特定を行います。その後は徹底的なヒアリングを行います。
- 多くの場合には、業者の選定プロセスや継続的なウォッチング体制に問題があることが多く、今後どうしていくかを検討します。
その場合には、競業他社ならどうしているかは参考になります。攻めの戦略は教えてもらえませんか。守りの戦略については、競業他社の営業マンに聞いたら教えてくれることもあります。
4 まとめ
- 安定した取引を継続するためにも、定期的な調査が必要になってきます。
- 信頼のおける調査会社に依頼してみるのもよいかもしれません。
1 採用
-
- 採用のときには、聞いてはいけない事項や、調査してはいけない事項があります。
- 家族状況(母子家庭で育ったかどうか)等、応募者の適性・能力とは関係ない事柄については採用試験のときには聞いてはいけない。調査してはならないとされています。 具体的な質問の適否は以下のとおりです。 公正な採用選考の基本|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm
-
就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例 | 大阪労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/shokugyou_shoukai/hourei_seido/kosei/futeki.html
2 最高裁判例
-
-
- 最判昭和48年12月12日の三菱樹脂事件は、「企業には、どんな人を採用するか自由であるから、特定の思想信条があることを理由に採用しなくても当然には違法ではない。」とした判例であると紹介されています。
- しかし、厚生労働省は、「危険な思想を持っている等でない限り、本来どんな思想をもっているかは自由であるから、宗教や思想について不利益に扱ってはらない。」と注意を呼び掛けています。
- 昭和48年の判例は40年近く前の判例です。したがって、判例変更の可能性は十分になると考えてよいでしょう。
3 対策方法
-
-
- してはいけない質問は一通り勉強しましょう。
- 不適切な基準で採用しても、その問題が顕在化することはありません。したがって、そこまで注意する必要はありません。
- 採用された人は文句を言いませんし、採用されなかった人に不採用の理由を説明することないからです。
- 採用試験のときに、一方の面接官が不適切な発言をしたら、、別の面接官が「それセクハラです。」と軽く注意すればよいという程度でよいと思います。
4 大事なこと
-
- 一旦、採用(内定)を出すと、企業として大きな責任を負うことになります。会社に合わない社員を採用すると両者とも不幸になります。
- 面接官は言葉を選んで、聞きたいことを聞けないのでは意味がありません。できるだけ、いつもどおり、話して採用希望者の人柄を知るように努めるべきだと考えます。